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未来を見つめる詩人の足跡
『たずねびと』佐渡水仙

2025年5月17日 | 芸術 | ライター:山崎直哉

詩人・佐渡水仙(さど すいせん)にとって言葉とは、世界を見つめるためのたったひとつの方法だった。
詩集『たずねびと』を3月に発表し、文壇のみならず各方面にてその名を轟かせた詩人である佐渡水仙。彼の言葉を生身で感じるべく、私は彼の自宅に赴いた。

詩集『たずねびと』表紙

『たずねびと』(灯篭社)は、佐渡の詩と写真を一冊に閉じ込めた作品集である。
彼の家にあった大量のノートと写真、それは彼自身が「心に映ったものを見える形に変換する試み」と語った通り、視覚と感情が混在した表現の記録だった。
書籍には、言葉と映像が静かに共存しながら、読者を彼の内面世界へと招く力がある。

彼の家にあったのは、大量のノートと大量の写真。佐渡は心に映ったものをなんとかして見える形に変換しているのだという。そんな部屋で佐渡に創作についてインタビューすることができた。

Q「『たずねびと』を発表されて、大きく社会の変化を感じたと思います。佐渡さんはどこが一番変わりましたか?」
佐渡「僕自身は大きく変化はありません。私の言葉が人に届いたのだという情緒の高揚はありましたが、やることは変わらず、文字を必死に紡ぐ毎日です。どちらかというと、過去の私が救われたような気持ちにはなりました」
Q「過去の自分ですか?」
佐渡「はい。私はそれまで一人で言葉を抱えるしかありませんでしたので。誰かに届くっていうのは、なんというかむず痒いようなそんな気がします」
Q「今までは一人ということを意識していたんですね」
佐渡「僕はもともと表立って何かするような性格ではなかったので。学生の頃は特に、教室と家の往復の電車で本を読むのが一番の楽しみだったくらいです。
今となっては、とすら思わないくらい充実した時間でした。」
Q「その時間がご自身の創作に生きているという感覚もあるのでしょうか?」
佐渡「間違いなく生きています。電車って、周りにたくさん知らない人がいるじゃないですか。でも本を読んでいるときはその本の中にも知らない人がたくさんいるんです。
僕にとっては知らない人がどこかで何かをする、ということが割と同じように見えていて。一人だったのかもしれないけど、人は好きなんだと気づきました」

佐渡は話が深まっていくうちに、どんどん表情が崩れ、緊張が解けたように見えた。
それは彼の臆病だがしかし誠実で柔らかい世界の見方を体現しているようだった

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